《転変》の傷と、木材の自然な亀裂
制作で加えた痕跡と材料の変化を、外観だけで判別できるのか。木材の乾燥に関する資料を参照し、作品の状態を記述する方法を検討する。
傷の由来は外観だけでは決まらない
転変の正式資料は、作者が加えた傷と自然に生じた亀裂が同じだるまに残ると記している。この制作上の区別と、見る人が個々の痕跡を目で判別できるかどうかは、別の問題である。写真上の線を、すべて作者が加えた傷、あるいはすべて経年変化と記す根拠にはならない。[1]
作品の状態を記録するときには、亀裂の位置・長さ・開きなどの観察と、その発生原因の説明を分けられる。原因が分からない箇所も、形と位置を残しておけば、次の観察で変化を比較できる。

乾燥による割れの一般的な条件
米国森林製品研究所の『Wood Handbook』第13章は、木材の収縮と乾燥時の応力を、表面割れや内部割れに関わる要因として説明している。割れは時間が過ぎたという事実だけで起こるのではなく、材料の性質と乾燥条件の組み合わせに関わる。[2]
この資料は、木材の変化を検討するための一般的な説明である。転変の個々の亀裂が、どの湿度・工程・時点で生じたかを特定する資料ではない。材料の知識を作品へ適用する際には、一般的な原因と、この作品で確認された経過を分ける必要がある。
使用痕、制作の痕跡、展示後の変化
壁観の戸板には使用や補修の痕跡があり、そこへ制作時の塗膜が加わる。転変では意図した傷と自然な亀裂が併存する。両作品とも、古い表面を「時間の痕跡」とまとめるだけでは、使用・制作・その後の変化を区別できない。[1][3]
展示前後の比較では、いつ記録した状態なのかを写真とともに残すことが重要である。以前から作品に含まれる痕跡と、新しく生じた変化を同じ損傷として扱わず、作品の構成と状態の経過を照合できる。
亀裂を時間の尺度にしない
長い亀裂が古く、短い亀裂が新しいとは、外観からは決められない。痕跡の大きさを経過した時間の量と同一視すると、木材の条件や制作時の介入が見えなくなる。転変の傷は、その長さや数から作者の経験の強さを測る指標でもない。形としての痕跡と、そこへ意味を重ねる説明を分けて扱う必要がある。
それでも、変化を比較するために時間の記録は必要である。同じ箇所を異なる時点で記録すれば、原因を断定しないまま、変化が起きた範囲を確認できる。傷を一度できた固定的な記号として見る方法と、材料の変化を含めた状態として見る方法の差は、作品の制作後も続く。


