Dharma / 法 1 / 3

5体1組。左から順に「1年前」「1ヶ月前」「1週間前」「1日前」「1時間前」の時間軸に対応する

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Dharma / 法(ほう)(2026年)

素材
木(国産杉 / CNC加工・寄木造り・膠接着)、超高光吸収漆黒塗料、モルタル台座
寸法
本体 H280 × W228 × D226mm(1体)/ 台座 H40 × W280 × D280mm / 重量 約9.0kg(1体あたり)

ステートメント

「福だるま」には、願いを込めて片目を描き、願いがかなったときにもう片方を描く習わしがある。Dharmaは、この目を塗り潰すことで、願掛けに使われてきただるまの意味と見え方を問い直す造形実験である。願うことが思考や行動の代わりになっていないかという、私自身にも向けた疑問がある。引き寄せなど「願えば叶う」という言説も、この問いの対象となる。

題名のDharmaはサンスクリット語で、仏教では「法」と訳され、真理や教えを指す。福だるまの原型となった菩提達磨(Bodhidharma)の名にも含まれる言葉である。この題名には、だるまの宗教的な由来へ立ち返り、像に託された意味と、そこにある物そのものを見直す意図を込めた。

量産型の福だるまの形をもとに、杉材で同じ形の5体をつくる。木彫仏像の制作技法を参照し、各像を構成する5つの部材を寄木造で組み合わせ、膠(にかわ、動物由来の接着剤)で接合する。広く流通する形を反復しながら、その宗教的な由来を制作方法でもたどる。木工の下地処理を指す「目止め」という語を、だるまの目を塗り潰す操作として読み替え、漆黒塗膜の被覆範囲を段階的に広げる。

目を覆う黒は、光の反射を極限まで抑え、木目や陰影による凹凸の手掛かりも覆う。塗装面は平面のように見え、木地の丸みと漆黒のシルエットが同じ立体の中で接する。願いを託す目と、立体を認識する手掛かりを同じ黒で覆うことで、像の意味と見え方を同時に問い直す。

5体は、1年前、1か月前、1週間前、1日前、1時間前の同じ姿を表す。黒の被覆率は、各像の表面全体に対して順に15、25、40、62、95%である。正面と側面から見たときに五段階の違いが読み取れるよう、この割合を選んだ。現在に近づくほど黒は広がり、形は捉えにくくなる。この配列は、現在に近いものほど確かに捉えられるという期待を反転させる。捉えた瞬間に過去となる「今」を、形の捉えにくさを通して示す。

目を覆い、見慣れた姿を捉えにくくしても、物体そのものは目の前に残る。本作は、像に託された意味や、見慣れた姿を支える視覚情報を削ぎ落とし、そこに残る物の構造と存在に向き合う試みである。捉えきれない現在と、いつか失われる存在に、いまどう向き合うのかを問う。

個展「まだ、記憶にはあるもの。」出品作品(UNO HOTEL Gallery/2026年11月5日〜2027年1月11日)。

旧題:daruma dharma