ステートメント
木製の器の表面を黒い漆で覆い、正面のくぼみには木肌を残す。このくぼみは、茶碗の正面に浅いへこみをつける「前押(まえおせ)」を参照して彫ったもの。器の意匠としてつくられた形に、将来、欠けたり朽ちたりする姿を重ねている。
器を完成させるためのくぼみが、その完成した姿を保てなくなる未来を思わせる。大切なものを失うかもしれないという不安は、それがまだそばにある間にも生じる。本作は、将来の喪失を今ある器の形に重ねることで、身近な物や人が今ここにあることへ目を向ける。いつか失われるものと、今どう関わるのかを問う。