ステートメント
銀杏の木を彫り、兎を思わせる耳と、顔の中央を貫く空洞をつくる。輪郭は兎を思わせるが、顔を見ようとすると中央の空洞に目が向く。見慣れた姿と、目の前の木の形が重なる。
月面の暗い領域は、かつて水のある海と考えられ、「海」と名づけられた。現在は溶岩が固まった平原と分かっていても、その名は残る。月の暗い模様に兎の姿を見出すように、人は目に見える形に、知っているものの姿や意味を重ねる。
記憶も、経験のすべてをそのまま保存しているわけではない。思い出すときには、後から知ったことや解釈が重なることがある。本作は、兎を思わせる木の形を通して、目に見える形と、それに重ねる記憶や知識の関係を問う。